大泉発電所(1号、2号)編

 イージーパワーの第1期の発電事業、そのスタートを切る山梨県北杜市の大泉発電所が2016年4月20日に発電を開始しました。大泉発電所は、1、2号機合計で出力114kW。小海線甲斐大泉駅から南に下りたところにあります。もともとは農地で、戦後農家の人たちがカラマツ林にしたのですが、まったくお金にならず、放置されて原野となったところです。発電事業を行うことで、地主さんには地代、そして荒れ果てたカラマツ林の整地などにつながります。太陽光発電パネルの設置方法は、草地をそのまま残す単管パイプ工法なので、土地へのダメージを与えません。20年後に太陽光発電事業を終えれば、今度は元の農地に戻すことも可能です。

 発電開始を記念して関係者による開所式を行ないました。近くの小海線甲斐小泉駅には、武田信玄の三分一湧水、そば処三分一、平山郁夫シルクロード美術館があり、信玄の知恵と美味しい手打ちそばを堪能し、そして平山画伯の大作とシルクロードの美術品たちに出会うこともできました。発電所の敷地内には小さなせせらぎもあり、トノサマガエルが跳ねていました。発電パネルの裏側はちょうどよい日陰で、シイタケなどの栽培もできそうです。また、あたりにはワラビも群生、せせらぎにはワサビも育ちそうでした。美味しそうな発電所です。

 (写真)大泉発電所の前で記念撮影

 武田信玄の知恵、三分一湧水と平山郁夫画伯のシルクロード美術館の写真も少しご紹介します。三分一湧水は農業用水を均等に分ける仕組み。戦国時代に、地域に平等に水を分ける方法を武田信玄は持っていたのです。今は、その下に小水力発電が作られているのですが、稼働しておらず、電気も展示品に使うだけという、ちょっと悲しい設定でした。もっと活用できるはずです。シルクロード美術館は平山画伯の絵画だけでなく、画伯生前に集めたシルクロードの美術品が並び、想像以上に立派なものでした。とくにアフガニスタン、ガンダーラの美術品は、タリバンによって破壊し尽くされた今、世界でも数少ない現存品とも言えるのではないかと思います。

 最後に、この日は清里駅近くにある、羽村市自然休暇村に泊まりました。ここには、立派な天体望遠鏡があります。夜は、天体観測。ちょうど、ジュピター(木星)を綺麗に見ることができました。

匝瑳発電所(1号、2号)編

 「農業と太陽光発電の協働」それがソーラーシェアリング。農業生産だけでは十分ではない農家収入にプラス収入をもたらし、耕作放棄地を耕地に戻すという効果を持っています。設置も広がりつつありますが、千葉県、茨城県、福島県などに集中しています。この背景には、ソーラーシェアリング設置の大前提に「農業委員会」による「農地転用許可」が不可欠ということがあります。農業委員会の認知度、理解度、応援度によって左右されるわけです。

 それでも、「農業と太陽光発電の協働」をめざして、いろいろなグループがチャレンジしています。農業そのものも収量があがる、さらに太陽光からの発電収入、そして何よりも農地を美しく演出するのです。農業生産(食物自給)と発電(エネルギー自給)そしてあわよくば観光の目玉にもなります。

 匝瑳市は千葉県北東部の人口約4万人の市です。2006年に八日市場市と匝瑳郡野栄町が合併して誕生しました。八日市場市も八日市場町と周辺の町村が合併してできたもので、もともとは幾つもの村だったところです。

 南部は九十九里浜に面する平坦な地形です。航空地図で見ると、北部は山で、そこを切り崩したり埋めたりして、古来の人々が農地を拡大して来たことがわかります。ソーラーシェアリングの予定地は、この北部に位置します。イージーパワー1号機の場所は今でも少し高台です。来年着工の2号機の方は、少し低い平らな場所ですが、実は傾斜していて、海側と山側では1メートル以上の落差があります。まっ平らじゃないんですね。

 イージーパワーがタッグを組んでソーラーシェアリング事業を進めるパートナーである「市民エネルギーちば」が、少し離れたところに「ソーラーシェアリングメガソーラー」を設置しましたが、その場所は、もともと山だったそうです。何十年も前に、そこを田んぼにするために当時の人たちが山を削ったのだとか。そうするとなんと遺跡が出てきました。土器のかけらだけでなく多数の人骨も。弥生遺跡か、もしかしたら古墳だったのかもしれません。そんなわけで遺跡調査が開始され、そのまま10年も経過すると「減反政策」がはじまり、田んぼなんか作るなということになったそうです。山の表面は肥沃な千葉県の土地も、山を削ると中は痩せた栄養のない土だそうで、結果的にこの土地は人々のお荷物となってしまいました。その困った土地の有効活用としてソーラーシェアリングがはじまったのです。

 イージーパワーの発電所は、ソーラーシェアリングといっても、ただの発電所ではありません。
 動くのです。ソーラーパネルは南向きではなく、東西に向くように置かれています。朝は東向き、昼には真上に、午後には西向きというふうに自動で動きます。もちろん晴れている日にはですが、太陽を追尾するのです。台風が接近したりすると、風の抵抗を受けにくくなるように水平になります。激しい雨の後は、大きく傾けて畑に陽をあてて乾かすことも可能。動くことによって、太陽光発電の効率はグンと上がりました。これを考案した「市民エネルギーちば」の想定では稼働率(設備利用率)16%超にもなるといいます。
太陽光発電としては高い部類で、1kWあたり1年間で1500kWh近い発電をすることになります。

 匝瑳1号機の面積は1270平方メートル、2号機は1240平方メートルです。一般的な50kWの野立て発電所は1000平方メートルくらいなので、2割増しの面積です。

 ソーラーシェアリングは、農業委員会から農業生産量を2割以上落とさないことが条件として課されています。その状況を3年ごとに見直し、もし条件を満たしていない場合は、農地転用が解除されます。その場合は、農地の上に置いたソーラーパネルを全て撤去しなければなりません。厳しい条件です。

 その農業の方は「市民エネルギーちば」を通じて、農業にチャレンジする若者たちが担います。農業法人「スリーリトルバード」を立ち上げています。有機無農薬の大豆などの生産に取り組み、その生産物は近くのマクロビオティックレストランなどに、食材として収められる予定です。市民エネルギーちばが設置した最初のソーラーシェアリング発電所は、収量は増えたりはしていないが落ちてもいないとのこと。だんだんと実績が積み重ねられていくものと思います。

(写真)匝瑳発電所のスリットから見上げた空

三原発電所編

 これまで、山梨に千葉と関東に発電所を設定していたイージーパワーですが、もともとここに実家の建物があった、東京在住の田中さんからのご依頼で建設に至りました。ご両親が他界され、子ども達はみんな独立し、誰も住む人がいないまま、子ども達も高齢になり、実家が廃屋になって草ぼうぼうでご近所に迷惑をかけるという状況になることは避けたいとのお気持ちからの申し出でした。もしかしたら、これからもこういったご相談を受けることが出てくるかもしれません。

 社債で建設をすることとなり、順調に社債も集まり、皆様の応援のもと建設も順調に進み、設置が完了し、さあ発電開始するというタイミングで西日本豪雨災害に遭遇し、一部冠水するというアクシデントにも見舞われましたが、できる限りの支援をしたいとの思いから災害支援の寄付も集めました。2018年11月に無事運転を開始しまし、10月22日に開所式が行われました。

(写真)三原発電所を前に地元のメンバーと開所記念撮影